機械工学科 学科長 桑原 一成
新学科長の桑原一成(くわはらかずなり)です。1964年5月生まれ、本学に着任して9年目を迎えました。名字の本当の読みは「くわばら」なのですが、企業で研究活動を始めた当時、上司が共著者名にKuwaharaと記載した論文が高く評価されたため、それ以来、社内では「くわばら」、学会では「くわはら」という使い分けを行ってきました。本学に着任した際に通称名使用願いを提出し、それ以降はフルタイムで「くわはら」を名乗っております。人生の中で通称を使用してきた時間のほうが長くなり、いつの間にかそのほうが心地よく感じるようになりましたが、一昨年、娘が誕生した際に本名をもっと大事にしなければならないと実感しました。機械工学科出身なのですが、十数年にわたるエンジンの研究を通じて経験してきた様々な謎を根本的に解き明かしたいという探究心が高じて燃焼の化学反応論に軸足を置くようになりました。通称の件と同様に、化学反応を論じてきた時間のほうがエンジンを触ってきた時間よりも長くなろうとしていますが、いずれ原点回帰が必要なときが来ることを予感しております。同窓会には自動車好きの諸兄が多くおられ、事あるごとに私が研究に携わったガソリンエンジンの話に花を咲かせていただけると、その度に皆さまとの距離が縮まったように感じるとともに、広く普及し多くの人々に親しまれてきた技術の専門家としてオープンに発言することができる立場にいて家族を養えていることを何よりも幸せに感じる次第です。

さて、機械工学科では昨年度をもって村岡茂信先生と山本正明先生が退職され、新たに橋本知昭先生が着任されて所属教員は合計16名となりました。新たな一年間、我々教員に学科事務室の大谷直美さん、柏岡幸子さん、磯田令子さん、ピアサポーターの学生5名を加えた総勢24名のスタッフが一丸となり、学部1年生147名、同2年生135名、同3年生146名、同4年生190名、博士前期課程1年生30名、同2年生21名、博士後期課程1名という大勢の学生の専門教育をサポートしていきます。

同窓会の皆さまには、昨年度末から社会・学生要請検討会、卒業パーティー、新入生オリエンテーションと続いた学科の行事を相変わらず強力にバックアップしていただき、心から感謝を申し上げます。新入生オリエンテーションへは22名もの方にご参加いただき、小グループに分かれての新入生とのふれあい、卒業生、新入生、教員が一堂に会しての大夕食会を通じて先輩から新たな後輩に工大生のスピリッツを存分に伝えていただいたかと存じます。大半の方には昨年度も同行事にご参加いただきましたが、本年度の学生はしゃぶしゃぶ肉のおかわりのために積極的に行動するなど頼もしい一面を見せてくれ、今後の成長を大いに期待してもよいのではと思わせてくれたのではないでしょうか。夕食会の後には、翌日が月曜日であるにも関わらず最終電車ギリギリまで教員との語らいの時間を設けていただき、和気あいあいとした雰囲気のもとで貴重な意見交換をさせていただきました。今後、その他にも就職活動支援や夏の工作・実験フェアなどの行事をバックアップしていただけるのであればこれほど心強いものはないと考え、そのための体制づくりを急いで検討しております。その際は是非ともご協力をお願い申し上げます。

秋には発展コースの教育プログラムに対する日本技術者認定機構JABEEの審査が控えており、審査関係資料の作成や成績資料の整理、教育点検WG(松島先生、小池先生、羽賀先生、上辻先生、牛田先生、吉田先生)、社会・学生要請担当WG(桑原、田原先生、吉田先生、伊與田先生)、科目間連携WG(小池先生、桑原、上田先生、上辻先生、松島先生)、教育改善WG(井原先生、加藤先生、中川先生、西川先生)の活動の総括を進めていかなければなりません。また、2017年度には本学の将来をかけた梅田キャンパスのオープンが控えており、大宮キャンパスでもこの一大イベントに関わる各種の改革が検討されており、その中で機械工学科の考え方を主張していかなければなりません。このように重要な一年の舵取り役を任され、学科スタッフの協力および同窓会の皆さまのご協力のもとで着実に、大きな失敗でお叱りを受けることのなきようその役割を果たしていきたい所存でございます。前学科長の田原弘一先生はアイデア豊富な学科運営をされてきましたが、私の一年目は着実にということでご容赦ください。二年目に多少の冒険ができたらと考えております。

エンジンの研究分野では産・官・学が一致団結してオールジャパンの体制により世界の、特にヨーロッパの優れたエンジン研究組織に対抗し、我が国独自の技術を盛り込んだ究極のガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンを開発するという一大プロジェクトがスタートしました。この中で私は、エンジン内の着火現象、例えばガソリンエンジンのノッキングを制御するための化学反応論的アイデアを創出するという重要な役割を任されております。学科長、教育者、研究者、そしてもうじき二歳になる娘の父親という四足の草鞋を履く日々は多忙ですが、我が人生劇場の苦難をいかにかっこよく演じ切れるか、限界まで己を追い込んだその先に何を見出すことができるのかを長らく問うてきた私にとって現状はまさにベストシチュエーションです。学生のため、本学のため、それは皆さまのためでもあり、そして自分が生きてきた証を残すために前のめりに倒れるまで頑張る所存でございます。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。