機械工学科 特任講師 横山 奨
大阪工業大学機械工学科同窓会のみなさま、2018年4月1日付けで機械工学科の特任講師に着任致しました横山奨と申します。マイクロ流体力学研究室の学生の指導と流体力学、機械基礎ゼミナール、機械工学実験(空力実験)、および、宮部先生とともに、エンジニアリングプラクティス(ホバークラフトの製作)と人力飛行機プロジェクトを担当致します。

学士から修士、博士、研究員と人生のほぼ半分の時間を大学で過ごしてきました。今年で15年目の大学生活、そして10年目の研究生活を迎えます。学士から博士課程では、光干渉法を用いた管内流れの圧力分布の可視化、管内の濡れ性が気液二相流におよぼす影響の評価を主とした管内流れに関する研究に従事しておりました。博士号取得後は、それまでに培った流体や表面処理の知見をバイオ関連の研究に応用し、細胞マイクロパターニングの技術の開発や、細胞トラクションフォース評価法の開発、神経軸索観察用のマイクロデバイス開発に携わってきました。本学では、これまでの全ての研究を活かし、マイクロ流体力学に関する研究開発を推進するつもりです。マイクロ流体力学は聞き馴染みがない研究分野かもしれませんが、端的に言うならばマイクロメートルオーダの微小な空間内の流体を制御、応用する学問です。微小な空間内では、乱流の抑制、粘性の影響増大、エネルギー効率向上などの効果が現れます。これらの、特徴を有効活用することにより、流体の精密制御、高効率な熱交換が可能となります。みなさまの、身近にあるものでは、インクジェットプリンタが最たる例と言えます。また、製薬メーカーなどでは、マイクロ流体技術を活用し、掌に乗るくらいの微小なチップの中で複数の細胞を培養し、生体内環境を模擬する(Body-on-a-chip)ことで、薬物の効果や毒性などを動物実験なしに確認する試みが行われております。

さて、10年以上も大学におりますと、「勉強が好きなのですね」とか、「研究が楽しいのですね」などとよく言われます。個人的には非常に困惑する問いかけで、未だ嘗て勉強が好きだったことは一度もありませんし、悲しいかな、研究が楽しいかとも断言できるほど才能には恵まれておりません。研究は、99.99%は地味で失敗ばかりで辛いことばかりです、ただ残りの0.01%の成功や真理に到達したときの幸福感は、言葉で言い表せるようなものではありません。そして、成功や真理に到達するには、やはり地道な勉強が必要不可欠です。本学の学生さんには、何としてもこの体験を味わってもらいたいし、自身も指導者として、ともにそこに到達できるよう精一杯努力したいと思います。甚だ抽象的な挨拶となりましたが、今後ともご指導、ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。