人工衛星プロジェクトの進捗状況[2011]

小型人工衛星”プロイテレス”フライトモデル最終試験!
2号機・実用衛星、3号機・月探査衛星の開発開始!

工学部機械工学科・教授  田原 弘一

大阪工業大学・電気推進ロケットエンジン搭載小型スペースシッププロジェクト(Project of OIT Electric-Rocket-Engine onboard Small Space Ship(PROITERES:プロイテレス)、公式ホームページ:http://www.oit.ac.jp/elc/scl/oitsat/index.html)では、電気推進ロケットエンジンを搭載した小型人工衛星(図1、図2)を2010年に打ち上げる予定でしたが、インド側の事情によりそれは2011年末に延期されました。時間的に余裕ができたので、開発スケジュールを見直し、完成度を高めるためにじっくりと最終の衛星開発、総合試験に取り組んでいます。
プロイテレス衛星のミッションは、1)電気推進ロケットエンジン(図3)による小型衛星では世界初の動力飛行(地球低軌道から軌道上昇をロケット連続噴射により達成(宇宙動力飛行の実現))(ほとんどの人工衛星・探査機は、地上打ち上げの反動で飛行しているようなもの。自由に宇宙を飛翔することはほとんどできません。)、2)高解像度カメラによる地球観測、特に関西地区、淀川域の環境観察(現代GP「淀川学(環境教育)の構築と実践」の支援)。人工衛星のスペックは、質量14.5kg(大きさ:一辺30cm程度の立方体)、電力10W、高度670km(極軌道(北極と南極の上空を通過する軌道))、衛星寿命1年以上です。インド宇宙研究機関のPSLVロケットでの相乗り衛星として、インド南東部のサティシュ・ダワン宇宙センターから打ち上げられます。現在、衛星フライトモデルを完成させその最終総合試験を行っています。

さらに、学部4年生を中心にプロイテレス衛星2号機(図4)、3号機(図5)の開発に着手しました。2010年11月より、「電気推進ロケットエンジン動力飛行型地球観測小型実用衛星」であるプロイテレス衛星2号機(想定質量50kg)の研究開発がスタートしました。プロイテレス衛星1号機の開発技術と経験を活かして、衛星2号機では地球観測実用衛星の開発を目指し、大量生産可能な汎用衛星バスを研究開発します。特に、プロイテレス衛星シリーズの目玉である、電気推進ロケットエンジンを搭載することにより、迅速に目的地上空に移動し地球観測を行います。電気推進には衛星1号機に搭載したパルスプラズマロケットエンジンを採用し、その大電力化(20-30Wクラス)と固体推進剤テフロンの大量供給装置の開発を行います。さらに、観測カメラシステムの高解像度化を目指し、分解能0.5-2mを電気推進エンジンによる衛星高度の調整を併用して実現します。現在、プロイテレス衛星2号機のシステム設計、ミッション設定、打ち上げ・運用計画立案など一連の初期開発作業を行っています。

同時に、「電気推進ロケットエンジン動力飛行月探査小型衛星」であるプロイテレス衛星3号機(想定質量50kg)の研究開発をスタートしました。超小型衛星では世界初の月探査を目指します。新開発の電気推進ロケットエンジン(図6)を用いて、スパイラル軌道遷移により地球低高度軌道から月軌道まで動力飛行します。電気推進にはホール型イオンエンジン(電力20-30Wクラス;推進剤キセノン;比推力2000秒(比推力を約10倍すれば噴射速度m/sec、燃費の指標);推進効率30%)を採用します。衛星2号機と同様、概念設計、基礎設計の段階であり、両衛星共に3年後の完成、打ち上げを目標にしています。

本人工衛星プロジェクトは、その積極的な実践ものづくり教育活動が話題になり、新聞各社、NHK、韓国の新聞社・テレビ局などマスコミで多く取り上げられてきました。その内容から学生主体の生き生きとした活動の様子がお分かりいただけるでしょう。「夢は必ず実現できる!自分で実現するんだ!」意気込む学生諸君。これからも同窓会の皆様からの志の高い学生諸君の応援、ご支援、よろしくお願いいたします。

図1 プロイテレス衛星1号機の概略図